手縫いについて

ミドルウォレット手縫いInformation

こんにちは、クレスクントのウラノです。

レザークラフトの工程の一つに「縫い」がありますが、私は手縫いの作業が好きだったりします。

英語ではサドルステッチ、フランス語ではクチュールセリエと呼ばれる、元々は馬具を作る際に用いられていた技法なのですが、
二本の針を使って8の字で縫っていくというかなり手間のかかる縫い方で、ミシン縫いでは数十秒のところでも手縫いでは何十分とかかります。
その分、二本の糸それぞれが革を縫合する為、長年の使用で糸が切れてしまったとしても簡単には解れないというメリットもありますね。

手縫い名刺入れ

手縫いの場合は針を直接革に刺せないので、事前の準備が必要です。
まず、縫いを行う部分にディバイダという両端が針になっているコンパスのような道具を使用して、片方の脚を革の切断面に当て、もう片方の脚を銀面(革の表面)に当てた状態で切断面に沿ってスライドさせる事で線を引きます。
次に、フォークのような形をした菱目打ちという道具を線上に押し当てて穴の位置を革にマークしていきます。
既にマークした最後の穴の位置に菱目打ちの端を重ねる事で長い距離でも均等な間隔にマークできるのですが、ちょうどよい穴の間隔の菱目打ちが無い場合はディバイダの幅を目的の間隔にして菱目打ち代わりに使用することもありますね。
その後、菱ギリという刃先が菱形のキリを使用して、マークした穴の位置を一穴一穴垂直に貫通させて穴を開けます。
ちなみに、穴を開ける革の厚みが1mm程度の場合は、菱目打ちでそのまま貫通させる事もあるのですが、菱ギリが切る事で穴を開けるのに対して菱目打ちは押し開けるような感じで穴を開けてしまうので、基本は菱ギリです。

ディバイダーと菱目打ち

ここまで終わったら、やっと縫いの工程に入ります。
一つの穴に対して表と裏から2度(返し縫いの場合は4度)糸を通していくのですが、
既に通してある糸を後から通る針が刺してしまわないように、菱形の穴の形状を意識して縫い進めて行くことになります。
大変な労力のかかる作業ですが、その分完成した時に縫い目がキレイに揃っているのを見るのは、なんとも言えない達成感と喜びが得られます。
また、それぞれ独立したパーツが手の中で徐々に一つの形にまとまっていく過程も物作りの醍醐味です。
作業中は没頭もできるので、ちょっとした瞑想の効果もあるのかもしれません。

そういう理由もあって、現時点での私の作品は全てを手縫いで仕立てております。
お作りする品数が増えていたり、バッグなどの大物も今後は制作していきたいので、ミシンの導入予定もあるのですが、手縫いは最も好きな工程の一つなので全てがミシン縫いになることはありません。

手縫いならではの良さが感じられる作品をお届けできればと思います。

手縫いキーケース

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